Thinking like an investor

自分の思考の整理と記録のために始めました。ご意見は大歓迎で、特に小生と異なる見方は傾聴に値します。

経営者の発言から考える〜その2 大原氏〜

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個店経営を貫いてきたことが成功の背景にあると大原CEOは語っている。

当社ですら個店経営を継続するのは非常に難しい。会社の規模が拡大すればするほど、変化に対応するのではなく、昨日と同じことを踏襲したくなる。

 19年3月末で店舗数は327店舗と300店舗を超えてきている。外食の経営では、一般的に300店を超えると途端に本部での管理が行き届かなくなるので、300店舗程度がベストな規模であるという意見も聞く。

この先もドンキホーテが人に依存する個店経営を貫いていけるかどうか、そして同時に本部でしっかりと管理しきれるかどうかの、変化点にあるかもしれないと筆者は考えている。

 

当然ながら経営陣がそれに気がついていない訳はなく、だからこその源流推進本部(以下の東洋経済の特集記事参照)の設置、ということだろう。

今年2月、ドンキ社内に新しい部署が設置された。「源流推進本部」。『源流』とは、安田氏が自身の経営理念をまとめた冊子。取引先との公私混同の禁止などの鉄則が書かれ、11年から全社員に配布している。内容をそらんじられなければ出世できないといわれる、ドンキのバイブルだ。推進本部長を務めるPPIHの西井剛取締役は「会社が変革する中、ネジが緩まないよう原点に立ち返る必要がある」と説く。

創業者・安田氏の理念が書かれた『源流』を全社員に配る(撮影:今井康一)

ドンキは今年から支社制を廃止し、全国20の各エリアの統括を源流「伝道師」の称号を持つPEO(フィロソフィーエグゼクティブオフィサー)が担う体制に変わった。PEOはエリア店舗の営業数値だけでなく、いかに『源流』の理念を現場に根付かせているかを求められるという。個店主義は人に依存する部分が大きいだけに、今後拡大のスピードに人材育成が追いつくかは大きな課題だ。

ドンキは昨年、米ウォルマート傘下・西友の買収の有力候補として取り沙汰された。大原社長は本誌の取材に「むしろ、そごう・西武の売却話が出てきてもおかしくない」と、百貨店の受け皿になる可能性までほのめかした。次代の流通王か、永遠の異端児か。ドンキ自身も今、大きな岐路に立っている。

7532 パン・パシフィック・インターナショナルHD

時価総額1.1兆円、今期P/E 23.6x, P/B 3.9x

投資家としての心構え その2 〜Why Study Cycles ?〜

再びHoward MarksのMastering Market CyclesのWhy Study Cycles ? から引用したい。

What is a investing, its simple to define the task: we assemble portfolios today that we hope will benefit from the events that unfold in the years ahead.

For professional investors, success consists of doing this better than the average investor.

...superior investors—like everyone else—don’t know exactly what the future holds, they do have an above-average understanding of future tendencies.

A knowledge advantage regarding the tendencies is enough to create success in the long run.

投資家としての仕事は何か?将来において利益を上げることのできるポートフォリオを今構築することだ。それを他の投資家よりも優れたリターンを生み出す形で実現することだ。そのためには、将来何が起こり得るか(”tendency”)について他の投資家よりもよく理解していることが重要だ。

 

...the future should be viewed not as a single fixed outcome that’s destined to happen and capable of being predicted, but as a range of possibilities

...we can talk about the things that might happen or should happen, and how likely they are to happen. Those things are what I call “tendencies.”

...Probability distributions reflect one’s view of tendencies.

Tendency”とは将来起こりうるシナリオの確率分布のようなものだ。将来を見通す際には、一つの結果ではなく、確率分布として見通すことが重要だ。

 

Remember, where we stand in the various cycles has a strong influence on the odds. ...opportunities for investment gains improve when: the economy and company profits are more likely to swing upward than down, investor psychology is sober rather than buoyant, investors are conscious of risk or—even better—overly concerned about risk, and market prices haven’t moved too high.

サイクルの中で今どこに位置しているのかという問いは、我々の勝ち目を左右する重要なポイントだ。経済、企業の利益、投資家の心理、これらも全てサイクルがあり、投資家としてのポートフォリオの勝ち目に影響する。

 

...if we apply some insight regarding cycles, we can increase our bets and place them on more aggressive investments when the odds are in our favor, and we can take money off the table and increase our defensiveness when the odds are against us.

サイクルの中でどこにいるのか?という見方ができれば、勝ち目が大きいときに攻め、勝ち目が小さいときに守りのportfolioで臨むことが可能になるのだ。

 

“Where we stand in the cycles”と問いかけることが重要だ。

株価と本源的価値のギャップを活用するためにサイクルへの理解が助けになると考える。本源的価値は会社の将来生み出すCFで決まるが、それを決める会社の利益や会社自身の投資の意思決定自体は人間の活動の結果であり、“先のこと”だ。このような「分からない“先のこと”」に対してどう向き合うかが重要だ。先のことは分からないが、それは百も承知の上で、他の投資家より良く理解するためにも確率分布的に考え、サイクルを活用することで投資家としてSuperriorな仕事をしたい。

投資家としての心構え〜Howard Marks〜

投資家として自分が日々重要だと感じている心構えをHoward MarksのMatering the Market Cycleという書籍の導入チャプターから引用したい。

 

A view on how markets work is important—you should have one before you set out to invest, but it must be added to, questioned, refined and reshaped as you proceed.

In investing, there is nothing that always works, since the environment is always changing, and investors’ efforts to respond to the environment cause it to change further.

この文脈でのviewとは英英辞書によると名詞ではa particular way of considering or regarding something; an attitude or opinion, 動詞としては、regard in a particular light or with a particular attitude、という意味が該当するのだろう。

市場というものへのview、「向き合い方」、これについては一生かけて、問いかけ、改善・修正していく、禅問答のようなものだと私は理解している。それは唯一絶対のものではなく、環境の変化に応じて常に変化して行くものなのだ。

 

Importantly, it’s great to read outside the strict boundaries of investing. Legendary investor Charlie Munger often points to the benefits of reading broadly; history and processes in other fields can add greatly to effective investment approaches and decisions.

色んなものを読むことが重要だ。究極的には人間を理解することがとても重要だと考えている。それを歴史を通じて学んでいく。産業史、経営史、思想史、政治史、人類史、科学史、様々な観点からのヒストリーを読み学ぶ。そのようなアプローチが自分に合ったやり方だと考えている。

 

Exchanging ideas with fellow investors can be an invaluable source of growth. Given the non-scientific nature of investing, there’s no such thing as being finished with your learning, and no individual has a monopoly on insight. Investing can be solitary, but I think those who practice it in solitude are missing a lot, both intellectually and interpersonally.

投資は孤独ななプロセスだ。だが投資家としての成長のためにはアイデアの交換が欠かせない。投資とは科学的側面だけではなく、答えが一つに決まるものではないのだ。一生学び続け、向上に努めるものだと考えている。

場としての実店舗の価値について考える〜その1〜

jp.wsj.com

ベイン・アンド・カンパニーの集計によると、2018年の空港内の売上高は前年比で7%増えた。これに対し、デパートの売上高は4%減、市街地の直営店舗は横ばいだった。空港の売上高を上回ったのはオンライン販売のみだった。

世界的な観光旅行ブームがこのトレンドを後押ししている。国連のデータによると2018年には外国に旅行した人が前年比6%増の14億人に達した。

空港という立地はその消費を捉える効率的な方法となっている。また、空港自体も商業収入への依存度を高めている。航空便を獲得するための空港間の競争激化が、着陸料の下押し圧力となっているからだ。そのため空港側は、世界の高級ブランドが求める水準にターミナルを改装することもいとわない姿勢を強めている。 

小売業界でも空港は来店客数の増加が見込まれる数少ない場所の一つだ。国連世界観光機関によると、外国旅行者数は2030年までに現行水準の29%増となる見通し。

購入する財によって、消費者にとってベストな購入手段は変わるのだ。

重要なのは消費者余剰が購買手段によってどう変わるかだ。

消費者余剰とは感覚的には、価格自体のお得感(本源的価値ー支払総額)+買うという行為による満足感 ー 買うことによる時間的、身体的・精神的消耗、といったことろだろうか。

eコマースやインターネットは、消費者を賢くした。結果として消費者余剰を増やす方向に作用した。反対に生産者は消費者の無知に期待して儲けることは難しくなった。生産者余剰には下方圧力がかかっているのが現状だ。実力のある生産者とそうでない生産者との間での勝敗がつきやすくもなっており、勝者総取りの可能性も同時に高まった。

eコマースによる購入手法の方が消費者余剰を最大化できる財は沢山あるのが現状だ。これがeコマースの成長の背景だ。人間の尽きることのない物欲は昔から変わっておらず、変化したのはテクノロジーだ。eコマースは現状では消費者余剰を増やすことに成功しているようだ。

 

ブランド品は値下げをしないので原則一物一価だ。ネットの方が安売りしているといったことは起こりえない。為替の変動によって購買者にとっての価格は変動する。このことが免税に加えて海外で買うことの意味だろう。

そして海外旅行者数は当面増え続けるという事実も相俟ってブランド品にとっては空港店舗が魅力的な購入の場になるのだ。

ブランド品は実店舗での販売に馴染む財だ。店舗はブランド価値の発信として重要なショールームでもあるのだ。

実店舗の意味、提供価値について改めて問い直していくことが実店舗型の小売業やデベロッパーに求められる姿勢だ。

 

経営者の発言から考える〜永守氏〜

www.nikkei.com

経営者は景況が少し悪くなってもすぐよくなると思いたいものだ。

経営者が陥りやすいバイアスをよく理解していると思う。経営者も人間だ。人のインセンティブも色々だ。投資家として経営者の発言を吟味していく上では心に留めておくべき事項だ。

 

「政治家は理想を追って理想に向かおうとするが、必ずしもいい結果をもたらさない。今は政治リスクが1000倍くらい上がっていると感じる。だから経営者はリスクを分散しないといけない。これがトップメーカーの使命だ。将来のことは完全に見通せないが、『こうなればこうする』と選択肢をいくつも持っていなければならない」

先のことは完全には分からないというのが彼の思考の出発点になっているように見える。経営者としては多くの選択肢を持っていることが重要、というのは傾聴に値する、と考える。投資家として、先のことは分からない中で何が起きても環境の変化に耐え優れたリターンを上げることのできる勝ち目のあるポートフォリオを準備しておく、ことが重要だ。

 

「10年間苦しんだのが後継問題だった。カリスマがいればそれが一番いい。でもいないのだ。どれだけ探してもいなかったのだから。結局。創業者は後見人として長生きし、3、4人くらい社長が代わるのをみて路線を定着させるのが一つの形かもしれない」

 どれだけ探してもいなかった、とハッキリ言えるのは、とても率直な経営者だ。

平均的な経営者であっても平均以上の利益成長が可能な立ち位置、ビジネスモデルの会社を探すことが重要だ。良い経営者であれば望ましいが、カリスマはそう多くなく、何が起こるかは分からないのだから。

投資家として考える〜その1〜

どう市場に対峙するか?

株式市場は情報を織り込む素晴らしい仕組みを持っている。投資家の心配や期待は株価に確りと織り込まれていることがほとんどだ。市場は完璧ではないがそこまで愚かではない、という謙虚な姿勢で市場と向き合いたい。

 

どんな会社に投資するか?

  • 継続的にキャッシュフロー(CF)を生み出せる優位なビジネスモデル
  • シンプルなビジネスモデル。複雑だと判断するのが難しい
  • 10年後にも存続していそうなビジネスモデル
  • 10年後に今より価値が高い可能性があるビジネスモデル
  • 会社自身でコントロール可能な要素が多いビジネスモデル
  • 経営陣の質。率直で誇張がないか。実行可能なこと以外は公約しない誠実さがあるか。株主利益にも注意を払っているかどうか。
  • バランスシートのリスクが大きくない会社

これは人によってスタイルが分かれもするし、賛同者も多い部分であろう。これらの基準の正しさに関しては既に広く知られているため、これらに依拠して投資するだけでは平均的な投資家よりも優れたリターンを継続的にあげていくのは難しい。重要なのはいい会社を見つけることでなく、割安な会社を見つけることだ。何を買うかは勿論大事だが、いくらで買うかも同じくらい重要だ。

 

なぜいくらで買うかが重要か?

株式市場での取引価格(株価)が会社の本源的価値(Intrinsic Vslue)にピッタリ一致していることは稀だ。株価は本源的価値の周りをふれる振り子のようなものだ。

筆者は、最終的には(市場参加者の売買の結果として)株価は本源的価値に収斂していくものであると考えている。これは冒頭で株式市場は情報を織り込む素晴らしい仕組みを持っているといったことと同義だ。

本源的価値よりも十分に安い価格で買えば大きく儲けられる可能性が上がる(逆に本源的価値よりも十分に高い価格で買えば大きく損をする可能性が上がる)ということだ。

株式投資とは会社の本源的価値と株価の裁定取引(ギャップの解消)に主体的に参加する行為である、と筆者は理解している。

 

結局、何が重要か?

会社の本源的価値がどの水準にあるか?どのように変化していく可能性があるのかについて自分なりの見方(View)をすることがまず必要だ。

自分が見出した本源的価値と株価とのギャップが大きいほど、大きく儲けられる可能性があるユニークなViewと言えるだろう。だが、ここで思い出すべきは、市場はそこまで愚かでないということだ。そんなに美味しいアイデアであれば他のヒトがその見方に基づいて売買することでギャップは既に解消されている筈だ、それが解消されていないのは何故なのかを真摯に考えるべきだ。

ユニークなViewであってもそれが実現しなければ、その本源的価値は絵に描いた餅で終わってしまう。ユニークなViewは概して実現可能性が低いと思われているものであり、実際実現しないことも多いのだ。ユニークなViewを発見することは難しい。

寧ろ、ユニークなViewを主体的に創り出しにいく、という気概と知恵と勇気があって、それを一貫してできるかどうかが勝負の分かれ目だ。

Where are we in the cycle ? ー Japanese machinery space

「中国の内需底堅い。日本国内も下支えし年間受注額は業界団体推計の1.6兆円を上回りそうだ」

「19年の受注額は1.3兆円で18年実績比で3割ダウンとみている。問題は米中貿易摩擦ではなく、景気サイクルが後退局面に入ったことだ」

中国向けの受注は「7月以降、回復に向かう」(野村証券アナリストの野口昌泰氏)との見方が多い。金融緩和など、中国政府の政策効果が期待されているからだ。

中国向けの工作機械についてオークマの花木義麿社長は「受注は戻り歩調にある」としたうえで、早ければ春以降に回復するという。DMG森精機の森雅彦社長は「昨年末まで顧客から前金(手付金)がもらえない状態だった。足元は引き合いが戻っている」と話す。

見方や予測は人によって色々だ。本当に確実に分かっていることは多くない。

マクロの未来を一貫して知ることは不可能だ。

知りうること、ファンダメンタルズについて誰よりもよく知るべきだ。

経営者のコメントが最も注目に値すると考える。中国向けの需要は完全にストップしていたところからやや動きが出はじめたといった程度であり、長期停滞の可能性がないとは言っていないことには注意が必要だろう。

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