Thinking like an investor

自分の思考の整理と記録のために始めました。ご意見は大歓迎で、特に小生と異なる見方は傾聴に値します。

場としての実店舗の価値について考える〜その1〜

jp.wsj.com

ベイン・アンド・カンパニーの集計によると、2018年の空港内の売上高は前年比で7%増えた。これに対し、デパートの売上高は4%減、市街地の直営店舗は横ばいだった。空港の売上高を上回ったのはオンライン販売のみだった。

世界的な観光旅行ブームがこのトレンドを後押ししている。国連のデータによると2018年には外国に旅行した人が前年比6%増の14億人に達した。

空港という立地はその消費を捉える効率的な方法となっている。また、空港自体も商業収入への依存度を高めている。航空便を獲得するための空港間の競争激化が、着陸料の下押し圧力となっているからだ。そのため空港側は、世界の高級ブランドが求める水準にターミナルを改装することもいとわない姿勢を強めている。 

小売業界でも空港は来店客数の増加が見込まれる数少ない場所の一つだ。国連世界観光機関によると、外国旅行者数は2030年までに現行水準の29%増となる見通し。

購入する財によって、消費者にとってベストな購入手段は変わるのだ。

重要なのは消費者余剰が購買手段によってどう変わるかだ。

消費者余剰とは感覚的には、価格自体のお得感(本源的価値ー支払総額)+買うという行為による満足感 ー 買うことによる時間的、身体的・精神的消耗、といったことろだろうか。

eコマースやインターネットは、消費者を賢くした。結果として消費者余剰を増やす方向に作用した。反対に生産者は消費者の無知に期待して儲けることは難しくなった。生産者余剰には下方圧力がかかっているのが現状だ。実力のある生産者とそうでない生産者との間での勝敗がつきやすくもなっており、勝者総取りの可能性も同時に高まった。

eコマースによる購入手法の方が消費者余剰を最大化できる財は沢山あるのが現状だ。これがeコマースの成長の背景だ。人間の尽きることのない物欲は昔から変わっておらず、変化したのはテクノロジーだ。eコマースは現状では消費者余剰を増やすことに成功しているようだ。

 

ブランド品は値下げをしないので原則一物一価だ。ネットの方が安売りしているといったことは起こりえない。為替の変動によって購買者にとっての価格は変動する。このことが免税に加えて海外で買うことの意味だろう。

そして海外旅行者数は当面増え続けるという事実も相俟ってブランド品にとっては空港店舗が魅力的な購入の場になるのだ。

ブランド品は実店舗での販売に馴染む財だ。店舗はブランド価値の発信として重要なショールームでもあるのだ。

実店舗の意味、提供価値について改めて問い直していくことが実店舗型の小売業やデベロッパーに求められる姿勢だ。